2011年10月25日
19番目のティーショット (ゴルフ奮闘記外伝)
人間の細胞は1日で1%生まれ変わるらしい。
人は100日、およそ3ヶ月で完全に生まれ変わる。
あの日から96日。
僕は生まれ変わることが出来ているのだろうか。
こんにちは皆さん。
ユウキです。
みんなはもう僕のこと知っているよね。
孤独なゴルファーってとこかな。
10月24日、決戦は金曜日、ではなく月曜日だった。
燃えたよ、燃え尽きたよ、真っ白にな・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
午前5時45分。
かすかに鳴り始めた音楽は、30秒後に部屋全体に響いた。
ユウキの左親指がミスブランニューデイの響きを止める。
あの日とは違う。
過度の緊張はない。体も軽い。
1回、2回、ユウキは軽く素振りをした。
「いける!」根拠レスな自信が彼を完全に覚醒させた。
準備を整えたユウキは問題のシューズを抱えて集合場所に急いだ。
決戦5日前。
ユウキは準備に余念がなかった。
ない。
いや、無しでござる。
シューズがない。
傘がない井上陽水も問題だが、シューズのないゴルファーは更に始末が悪い。
しかし、ユウキは違った。
「シューズなんかいりまへん」
何度も言う。
ユウキは埼玉県人である。
大阪人でもなければ、ナイジェリアのイボ族でもない。
歴史上シューズレスでゴルフをプレイしたのはただ一人。
ユウキの師匠、猿谷猿丸、そう通称プロゴルファー猿、彼だけである。
しかし、時代が違う。
スパイクレスは有だが、シューズレスは無でござる。
「ぎりぎりセーフだと思ったんです」
これが通用するのは芸能界だけだ。
結局、ユウキのシューズは別のゴルフ場で見つかった。
1.16メートルのカーボンが綺麗な弧を描き、
そこから36度の角度で放たれた白球は更に美しい弧を描いた。
レイク相模カントリークラブ。
決戦の火ぶたは、三田のナイスショットで切られた。
ユウキは第2組。
やはり2組。
でも、もともと特別なオンリーワンだからいっか、と予測不能なことを考えているとユウキの番が回ってきた。
ユウキの組は、大森、藤原、北島、そしてユウキ。
ユウキにはターゲットを一人に絞る癖がある。
長年の合コンで培ってきた荒技だ。
今回、彼がターゲットにしたのは藤原。
その17秒後、藤原のナイスショットによって、今回も孤独な戦いになることをユウキは悟った。
ユウキには好きな野球選手がいた。
落合博満と清原和博。
豪快なホームランもそうだが、さすがはユウキ、目の付け所が違う。
彼らのライト方向へのバッティングに目を奪われた。
「ファー!!」
キャディの声がカントリークラブ中に響いた。
全盛期の落合を彷彿とさせる見事な流し打ちだった。
打てども打てどもボールは右へ。
右に飛び出したボールがさらにあり得ない角度で右に曲がる。
ここの角度を求めなさい、という数学の問題になり得る角度で曲がった。
ゴルフにOBという素晴らしい制度がなかったら、
ユウキは右折を繰り返し、永遠に円を描き続けることになっていただろう。
それでも前半は粘った。
何とか58でまとめた。
後半もこらえた。
得意の砂遊びに勤しみながら、水は避けた。
年上だけの同伴競技者達にもかかわらず、
「あー、疲れる。何か気疲れ半端ない」
などと暴言を吐き捨てた。
初の110台が見えた最終18番ホール。
悪夢は起きてしまった。
2打でグリーン手前30ヤード地点まで付けたユウキ。
あろうことか、ここで彼が手にしたクラブはパター。
残り30ヤードをパター、という暴挙に出た。
大森やキャディの制止を振り払ったユウキだったが、
母なる大地の怒りに触れてしまった。
ディボット(地面に空いた穴)に入ったボールの頭をパターで殴りつけた。
7㎝だけ進んだボールにユウキは我を忘れた。
「あー!ダフッたー! 何だよこのホットスポット」
夢の110台は儚く散った。
それでも58・64の122をマーク。
新記録を樹立した。
ユウキは生まれ変わっていたのだろうか。
ユウキ以外には知るよしもない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
わるい、長くなっちゃったね。
今回もいろいろあったけど、全力を尽くせたことは良かったんじゃないかな。
燃え尽きたって言ったけど、
次回に向けてまた1から頑張ります。
応援ありがとう。
みつを
じゃないや
ユウキ
人は100日、およそ3ヶ月で完全に生まれ変わる。
あの日から96日。
僕は生まれ変わることが出来ているのだろうか。
こんにちは皆さん。
ユウキです。
みんなはもう僕のこと知っているよね。
孤独なゴルファーってとこかな。
10月24日、決戦は金曜日、ではなく月曜日だった。
燃えたよ、燃え尽きたよ、真っ白にな・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
午前5時45分。
かすかに鳴り始めた音楽は、30秒後に部屋全体に響いた。
ユウキの左親指がミスブランニューデイの響きを止める。
あの日とは違う。
過度の緊張はない。体も軽い。
1回、2回、ユウキは軽く素振りをした。
「いける!」根拠レスな自信が彼を完全に覚醒させた。
準備を整えたユウキは問題のシューズを抱えて集合場所に急いだ。
決戦5日前。
ユウキは準備に余念がなかった。
ない。
いや、無しでござる。
シューズがない。
傘がない井上陽水も問題だが、シューズのないゴルファーは更に始末が悪い。
しかし、ユウキは違った。
「シューズなんかいりまへん」
何度も言う。
ユウキは埼玉県人である。
大阪人でもなければ、ナイジェリアのイボ族でもない。
歴史上シューズレスでゴルフをプレイしたのはただ一人。
ユウキの師匠、猿谷猿丸、そう通称プロゴルファー猿、彼だけである。
しかし、時代が違う。
スパイクレスは有だが、シューズレスは無でござる。
「ぎりぎりセーフだと思ったんです」
これが通用するのは芸能界だけだ。
結局、ユウキのシューズは別のゴルフ場で見つかった。
1.16メートルのカーボンが綺麗な弧を描き、
そこから36度の角度で放たれた白球は更に美しい弧を描いた。
レイク相模カントリークラブ。
決戦の火ぶたは、三田のナイスショットで切られた。
ユウキは第2組。
やはり2組。
でも、もともと特別なオンリーワンだからいっか、と予測不能なことを考えているとユウキの番が回ってきた。
ユウキの組は、大森、藤原、北島、そしてユウキ。
ユウキにはターゲットを一人に絞る癖がある。
長年の合コンで培ってきた荒技だ。
今回、彼がターゲットにしたのは藤原。
その17秒後、藤原のナイスショットによって、今回も孤独な戦いになることをユウキは悟った。
ユウキには好きな野球選手がいた。
落合博満と清原和博。
豪快なホームランもそうだが、さすがはユウキ、目の付け所が違う。
彼らのライト方向へのバッティングに目を奪われた。
「ファー!!」
キャディの声がカントリークラブ中に響いた。
全盛期の落合を彷彿とさせる見事な流し打ちだった。
打てども打てどもボールは右へ。
右に飛び出したボールがさらにあり得ない角度で右に曲がる。
ここの角度を求めなさい、という数学の問題になり得る角度で曲がった。
ゴルフにOBという素晴らしい制度がなかったら、
ユウキは右折を繰り返し、永遠に円を描き続けることになっていただろう。
それでも前半は粘った。
何とか58でまとめた。
後半もこらえた。
得意の砂遊びに勤しみながら、水は避けた。
年上だけの同伴競技者達にもかかわらず、
「あー、疲れる。何か気疲れ半端ない」
などと暴言を吐き捨てた。
初の110台が見えた最終18番ホール。
悪夢は起きてしまった。
2打でグリーン手前30ヤード地点まで付けたユウキ。
あろうことか、ここで彼が手にしたクラブはパター。
残り30ヤードをパター、という暴挙に出た。
大森やキャディの制止を振り払ったユウキだったが、
母なる大地の怒りに触れてしまった。
ディボット(地面に空いた穴)に入ったボールの頭をパターで殴りつけた。
7㎝だけ進んだボールにユウキは我を忘れた。
「あー!ダフッたー! 何だよこのホットスポット」
夢の110台は儚く散った。
それでも58・64の122をマーク。
新記録を樹立した。
ユウキは生まれ変わっていたのだろうか。
ユウキ以外には知るよしもない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
わるい、長くなっちゃったね。
今回もいろいろあったけど、全力を尽くせたことは良かったんじゃないかな。
燃え尽きたって言ったけど、
次回に向けてまた1から頑張ります。
応援ありがとう。
みつを
じゃないや
ユウキ
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